BTSのワールドツアー名が「ARIRANG」だと知ったとき、少し意外に感じました。
韓国では「アリラン」という名前がとても身近だからです。最新のK-POPや新しい流行を思い浮かべる言葉というより、子どもの頃からどこかで耳にしてきた昔からの歌、という感じのほうが近いです。
その「アリラン」が、2026年にはBTSのワールドツアー名になりました。
韓国では昔からよく知られているので、「アリランって何?」とわざわざ考えることはあまりありません。でも、BTSをきっかけに初めて「ARIRANG」という言葉を見た人なら、「これって何?」と思うかもしれません。
アリランって、そもそも何なのか。どうして韓国を代表するような名前として使われているのでしょうか。
アリランは一つの曲だけを指す言葉ではない
アリランを簡単に言えば、韓国を代表する民謡です。
ただ、多くの人が思い浮かべる「アリラン アリラン アラリヨ」という一曲だけを指すわけではありません。
韓国には、旌善(정선/チョンソン)アリラン、珍島(진도/チンド)アリラン、密陽(밀양/ミリャン)アリランなど、地域ごとにいろいろなアリランが伝わっています。
同じ「アリラン」という名前でも、実際に聴いてみるとメロディーやリズム、雰囲気はかなり違います。ゆったりしていてどこか切ないものもあれば、テンポが速く明るいものもあります。
ユネスコは、アリランを何世代にもわたる人々の共同の営みから生まれた民謡として紹介しています。地域によって歌詞が違い、歌う人が新しい歌詞を加えることもある歌です。
恋や別れを歌うこともあれば、苦しい暮らしを歌うこともあります。仕事をしながら歌ったり、人が集まったときにみんなで歌ったりすることもありました。
アリランは、誰か一人が作った一曲というより、いろいろな土地で人々に歌い継がれてきた歌です。
アリランは「悲しい歌」なのか
アリランは「恨(한/ハン)」という言葉と結びつけて語られることもあります。
実際、アリランには別れや恋しさ、つらい暮らしを思わせる歌詞もあります。
ただ、すべてのアリランをひとまとめにして「悲しい歌」と考えるのは少し違います。
地域によっては明るく軽快なアリランもありますし、仕事や遊び、人が集まる場で歌われてきたものもあります。アリランは、悲しい歌ばかりではありません。
それでも、私の中にはずっと「どこか切ない歌」という印象が残っています。
子どもの頃の記憶と、アリランが歌われてきた時代
子どもの頃、私はアリランを聴くとなぜか少し寂しい気持ちになりました。
歌の歴史も歌詞の意味も知りませんでしたが、テレビから流れてくると妙に心に残る歌でした。
今でもよく覚えているのが、曾祖母の歌声です。曾祖母はアリランをよく歌っていました。
当時の私は、曾祖母がどんな時代を生きてきたのか、その歌にどんな思いがあったのかも知りませんでした。どうしてあの歌があれほど心に残ったのかは、今でもよく分かりません。
大人になって歴史を知ってからは、「この歌はずっと昔から、いろいろな人が歌ってきたんだ」と思うようになりました。
朝鮮半島では、日本統治下にあった時代を経て、分断や朝鮮戦争など、近現代に大きな出来事が続きました。アリランは、そうした時代にも人々の間で歌われてきました。
1926年には、羅雲奎(나운규/ナ・ウンギュ)が監督・脚本・主演を務めた無声映画『アリラン』が公開されました。この映画は当時大きな人気を集め、作品の中でもアリランが使われました。
ただし、この映画がアリランの始まりではありません。アリランと呼ばれる歌は、それより前から各地で歌われていました。
それでも、アリランと聞いて最初に思い出すのは、子どもの頃に聞いた曾祖母の声です。今では、その声と一緒に、昔からこの歌を歌ってきた人たちのことも思い浮かびます。
「アリラン」という言葉にはどんな意味がある?
もう一つ気になるのが、「アリラン」という言葉そのものの意味です。
「アリラン」には、何か決まった意味があるのでしょうか。
実は、はっきりしたことは分かっていません。
「アリラン」の語源にはいくつもの説がありますが、どれか一つが正しいと決まっているわけではありません。韓国政府の公式サイト「Korea.net」でも、歌の起源と「アリラン」という題名の意味は分かっていないと紹介されています。
特定の漢字を当てて「アリランとはもともとこういう意味だ」と言い切ったり、「アリラン アリラン アラリヨ」という部分を今の韓国語の文章のようにそのまま訳したりするのは難しいです。
今のところ、名前の意味を一つに決めることはできません。その「アリラン」が、今ではBTSのワールドツアー名にも使われています。
BTSのワールドツアー名にも「ARIRANG」
2026年のワールドツアーは、公式に「BTS WORLD TOUR ‘ARIRANG’」と案内されています。

子どもの頃にテレビで聞き、曾祖母の歌声でも聞いた「アリラン」が、今では世界的なK-POPグループのツアー名になっているのは、私にはやはり少し不思議です。
BTSで初めて「ARIRANG」という言葉を知った人は、よく知られているアリランだけでなく、旌善アリラン、珍島アリラン、密陽アリランも聴き比べてみると面白いです。
同じ「アリラン」という名前でも、聴き比べるとかなり雰囲気が違います。
まとめ
アリランは韓国に昔から伝わる民謡ですが、一つの決まった形のまま歌い継がれてきたわけではありません。
地域や世代によって少しずつ形を変えながら、長い間いろいろな人に歌われてきました。
BTSのツアー名に使われた「ARIRANG」は、韓国で長く歌い継がれてきた民謡の名前でもあります。地域ごとのアリランを聴き比べると、同じ名前でも驚くほど雰囲気が違います。
