今の韓国では、街を歩いていてもネットニュースを読んでいても、漢字を見かけることはほとんどありません。
ハングルだけで普通に生活できますし、漢字が読めなくて困る場面もほぼありません。
でも、私が学生だった頃は今とは少し違いました。
新聞を開くと、見出しや本文の中に漢字がかなり混ざっていましたし、中学校や高校では漢字や漢文も習っていました。街の看板でも、ときどき漢字を見かけました。
今振り返ると、日常の中で漢字を目にする機会はけっこう多かったんですよね。
新聞を読んでいて知らない漢字が出てくると、前後の文章から「たぶんこういう意味だろう」と想像して、そのまま読み進めることもありました。
それが、いつの間にか新聞からも街からも漢字が減っていきました。
正直、その頃の私は「読みやすくなっていいな」くらいに思っていました。漢字よりハングルのほうが楽でしたし、難しい字を覚えなくても済むからです。
ところが今、日本で暮らしていると、「中学、高校のときにもう少し漢字を勉強しておけばよかったな」と思うことがあります(笑)。
韓国の漢字は、ある日突然なくなったわけではない
韓国で漢字が減ったのは、ある時期を境に一気に使われなくなったからではありません。
ハングル中心の表記が少しずつ広がり、政府の文書や学校の教科書でも漢字はだんだん減っていきました。
ただ、学校では漢字や漢文も習っていました。
私が学生だった頃も、中学校や高校で漢字を覚えたり、漢文を読んだりしていました。
普段読む文章はほとんどハングル。でも学校では漢字や漢文も習う。
私の頃は、だいたいそんな感じでした。
1990年代頃までは、新聞にも漢字がかなりあった

※当時の新聞表記をイメージしたイラスト
いちばん変わったと感じるのは、やっぱり新聞です。
今の韓国のニュースはほぼハングルだけですが、昔の新聞はハングルと漢字が普通に混ざっていました。
見出しだけでなく、人名や団体名などにも漢字がよく使われていました。新聞を開くだけで、自然と漢字が目に入ってきたんです。
子どもの頃は、知らない字が出てくるとそのまま飛ばしたり、「たぶんこういう意味かな」と前後から想像したりしていました。
それでも普通に新聞を読んでいました。
その後、新聞でもハングルだけの表記が増えていき、気がつけば昔のように漢字を見かけることはほとんどなくなりました。
今のネットニュースを見慣れていると、昔の新聞にこれほど漢字が入っていたことは少し想像しにくいかもしれません。
昔の街には漢字の看板もあった
新聞だけではありません。
昔は街を歩いていても、今より漢字をよく見かけました。
古くからある食堂や旅館、薬局、韓医院などでは、漢字を使った看板が出ていることもありました。
ハングルと漢字を一緒に書いたものもあれば、店名を漢字だけで大きく出しているところもありました。
今では、こうした看板はかなり少なくなりました。
もちろん、古い店や伝統的な雰囲気を出した店では今でも見かけます。
ただ、普通に街を歩いていて、漢字の看板が次々と目に入ってくるような感じではありません。
ハングルだけで生活しても困らない
漢字がここまで減った大きな理由の一つは、ハングルだけでほとんど困らないことです。
韓国語には、漢字から来ている言葉がたくさんあります。
たとえば、「経済」は「경제(キョンジェ)」、「社会」は「사회(サフェ)」、「文化」は「문화(ムンファ)」と書きます。
でも韓国では普段、「經濟」「社會」「文化」のように漢字で書くことはほとんどありません。
「경제(キョンジェ)」「사회(サフェ)」「문화(ムンファ)」とハングルで書けば、それだけで普通に意味が通じます。
学校(학교・ハッキョ)、会社(회사・フェサ)、時間(시간・シガン)なども同じです。
もともとは漢字語でも、今の韓国ではハングルで書くのが当たり前になっています。
普段の生活で漢字を使わなくても困らないなら、わざわざ漢字で書く必要もありません。
今の若い世代が昔の新聞を見ると、むしろ漢字の多さに驚くかもしれません。
漢字を知っていると便利なこともある
もちろん、漢字を知っていると便利な場面もあります。
韓国語には漢字語が多く、同じ発音でも意味が違う言葉があります。
普段の会話なら前後の流れで分かりますし、ニュースや文章でも、漢字がないと読めないということはほとんどありません。
ただ、言葉の意味や成り立ちを調べていると、漢字を見て「ああ、そういう意味だったのか」と分かることがあります。
日本の漢字と、韓国で習った漢字は少し違う
日本に来てから、ちょっと面白いなと思ったのが、韓国で習った漢字と日本で使われている漢字の形の違いです。
たとえば、學 → 日本では「学」、國 → 「国」、會 → 「会」、體 → 「体」、發 → 「発」といった違いがあります。
韓国で漢字を習うときは、日本でいう旧字体に近い形の字を学ぶことが多いのですが、日本では簡略化された「新字体」が一般的です。
日本に来たばかりの頃は、「この漢字、知っているはずなのに少し違うな」と思うことが何度かありました。
意味は分かるのに、形が少し違うので一瞬迷うんですよね。
逆に、韓国で覚えた漢字が、日本語の単語の意味をなんとなく想像するときに役立つこともあります。
学生の頃は漢字を覚えるのが面倒でしたが、日本に住むようになってからは、もう少し真面目に勉強しておけばよかったと思うことがあります(笑)。
今では漢字より、ハングルで書くのが普通になった
韓国では今も、学校(학교・ハッキョ)、会社(회사・フェサ)、経済(경제・キョンジェ)、文化(문화・ムンファ)、社会(사회・サフェ)、時間(시간・シガン)といった漢字語を毎日のように使っています。
言葉自体は昔と同じでも、今はハングルで書くのが普通になりました。
私が学生だった頃は、新聞を読んでも街を歩いても、今よりずっと漢字が身近にありました。
その頃は漢字が減っていくのを見ても、「楽になっていいな」くらいにしか思っていませんでした。
でも今、日本で毎日のように漢字を見て生活していると、学生時代に習った漢字や漢文も意外と無駄ではなかったんだなと思います。
あれだけ覚えるのが嫌だった漢字を、今になって毎日見ることになるとは思いませんでした。
