韓国ではなぜ漢字をあまり使わない?昔はどうだった?
韓国の街を歩いていると、日本ほど漢字を使った看板を見かけません。新聞やニュースサイトも、ほとんどがハングルで書かれています。
しかし、韓国でも昔は漢字が広く使われていました。ハングルが普及したあとも、新聞や書籍では漢字とハングルを混ぜた文章が使われていたのです。
私が韓国で学生だった頃も、新聞には漢字が混ざっていましたし、学校では漢字や漢文を勉強していました。なぜ今は漢字をあまり見かけなくなったのでしょうか。韓国での変化を、当時の記憶も交えながら紹介します。
目次
韓国では昔から漢字を使っていた
ハングルが作られる以前、朝鮮半島では中国から伝わった漢字を使い、漢文や漢字を利用した表記法で記録していました。漢字を用いて韓国語の音や語順を表す方法もありましたが、漢文を読んだり自分の言葉を書き表したりするには、学習のハードルがありました。
そこで、朝鮮王朝の世宗(セジョン)大王が1443年に新しい文字を作り、1446年に「訓民正音(フンミンジョンウム)」として公布しました。これが現在のハングルの始まりです。原本はユネスコ「訓民正音の原本」にも登録されています。
とはいえ、ハングルが誕生しても、漢字がすぐに使われなくなったわけではありません。その後も長い間、公的な文書や学問の世界では漢字が使われ、近代には漢字とハングルを混ぜて書くことも一般的になりました。
なぜハングルで書くようになったのか
漢字の使用が減っていく大きなきっかけとなったのは、1945年の日本の植民地支配からの解放後です。
1948年に「ハングル専用に関する法律」が制定され、公文書は原則としてハングルで書く方針が示されました。韓国国家記録院の政策史によると、1968年にハングル専用を促す方針が発表され、行政文書は1970年、学校の国語教科書は1971年からハングル専用へ切り替わりました。
その後も漢字教育をめぐる方針は変化しました。新聞や出版物の表記も一度に変わったのではなく、ハングルを中心に書く文章が徐々に広がり、現在のような表記へ移っていきました。
漢字を知らなくても読み書きできるのは、ハングルの便利なところだと感じます。一方で、漢字を知っていれば言葉の由来を理解しやすいこともあります。どちらにも良さがあると思います。
なお、韓国で漢字の使用が禁止されているわけではありません。現在の「国語基本法」でも公文書は原則としてハングルで書きますが、定められた場合には括弧内に漢字などを添えることが認められています。参考:韓国「国語基本法」第14条(韓国語)
昔の新聞や街の看板には漢字が多かった
学生時代を振り返って、今と大きく違うと感じるのが新聞の表記です。当時は新聞の見出しや本文に漢字が混ざり、人名や団体名にもよく使われていました。
知らない漢字が出てくると、前後の文章から意味を想像して読み進めていたのを覚えています。
街の看板にも、今より漢字が使われていました。昔ながらの食堂や旅館、韓医院(韓方医学の診療所)などで、店名が漢字で書かれていることもありました。
当時は漢字が減っていくことを特に不思議には思いませんでした。むしろ、難しい字を読まなくて済むので、ハングルだけのほうが読みやすいと感じていたくらいです。今思い返すと、普段の暮らしの中で目にする文字はずいぶん変わりました。
韓国語には今も漢字から来た言葉が多い
漢字をあまり書かなくなったからといって、漢字に由来する言葉までなくなったわけではありません。韓国語には、今でも漢字語がたくさんあります。
| 日本語 | 韓国語 |
|---|---|
| 経済 | 경제(キョンジェ) |
| 社会 | 사회(サフェ) |
| 文化 | 문화(ムンファ) |
| 学校 | 학교(ハッキョ) |
| 時間 | 시간(シガン) |
これらは漢字に由来する言葉ですが、韓国では普段、ハングルで書きます。
また、韓国語には同じ発音でも意味が違う言葉があります。たとえば「수도(スド)」には、「首都」や「水道」といった意味があります。それでも、普段は前後の内容から意味が分かるので、漢字を使わなくてもほとんど困りません。
ただ、言葉の意味や成り立ちを詳しく知りたいときには、漢字が役立つこともあります。学生の頃は面倒に感じた勉強ですが、今では覚えておいてよかったと思うこともあります。
今でも韓国で漢字を使うことはある?
現在の韓国でも、人名の漢字表記や歴史的な建物の扁額、伝統的な店の看板などで漢字を見かけることがあります。学校では漢字や漢文を学ぶ機会もありますが、どの程度学ぶかは学校や選択科目によって異なります。日常の文章では、ハングルが中心です。
日本で暮らし始めてから気づいたのが、漢字の形の違いです。韓国では伝統的な字形を使うため、日本で一般的な新字体と異なる漢字があります。私には日本の旧字体に近く見える字も多く、知っている字でも形が違うことに戸惑いました。
| 韓国で習う漢字 | 日本で一般的な漢字 |
|---|---|
| 學 | 学 |
| 國 | 国 |
| 會 | 会 |
| 體 | 体 |
日本に来たばかりの頃は、知っている漢字なのに形が少し違って、戸惑うことがありました。その一方で、韓国で覚えた漢字のおかげで日本語の単語の意味が分かることもあります。韓国と日本では漢字の使い方が違いますが、共通する言葉があるのは面白いところです。
まとめ|韓国では漢字がなくなったわけではない
韓国では昔から漢字が使われてきましたが、ハングルの普及や戦後の言語政策によって、日常の文章はハングル中心に変わりました。今でも漢字に由来する言葉は多く、漢字そのものがなくなったわけではありません。
学生時代は漢字を覚えるのが面倒でしたが、日本で暮らす今は、もう少し勉強しておけばよかったと思うことがあります。韓国では使う機会が減った漢字を、日本で毎日のように目にすることになるとは、あの頃は思いもしませんでした。
