韓国時代劇で父親だけ別のお膳なのはなぜ?「独床」の食事文化
韓国時代劇では、父親や祖父だけ別のお膳を使う場面があります。ほかの家族は、一つのお膳を囲んでいることもあります。同じ家族なのに、なぜ食事の仕方が違うのでしょうか。
子どもの頃、父はよく「男は家庭の柱だ」と話していました。家の中には、どこか男性が中心という空気がありました。母もその言葉を特に否定していなかったのを覚えています。
もちろん、子どもの頃の家庭と朝鮮時代の暮らしは別のものです。それでも時代劇の食卓を見ると、ふと考えてしまいます。昔は家族の立場が、食事の仕方にも表れていたのでしょうか。
その手がかりになるのが「独床(독상/トクサン)」です。韓国に伝わる食事の形式の一つです。
「独床」は一人に一つのお膳を用意すること
独床とは、一人分の食事を一つのお膳に用意する形式です。
韓国学中央研究院の『韓国民族文化大百科事典』では、「外床(외상/ウェサン)」と紹介しています。「独床(독상)」はその別名で、意味は同じです。
昔の韓国では、床に座って食事をする習慣がありました。そのとき使われたのが「小盤(소반/ソバン)」という小さなお膳です。ご飯や汁物、おかずを載せ、食べる人のところまで運べました。
一方、二人以上で一つのお膳を囲むのが「兼床(겸상/キョムサン)」です。

独床でも、必ずしも別の部屋で一人きりになるわけではありません。同じ部屋で食事をしても、一人に一つのお膳があれば独床です。
こうした違いを知ると、座る場所だけでなく、お膳の数にも目を向けたくなります。
なぜ父親や祖父に別のお膳が出されたの?
朝鮮時代の家庭では、儒教の考え方が重んじられていました。年長者や家長の立場は、食事の席やお膳の出し方にも関係していたのです。
『韓国民族文化大百科事典』には、20世紀半ば頃までの習慣も紹介されています。年長者には一人用のお膳を出し、子どもたちは同じお膳を囲む家庭もありました。
父親だけ別のお膳だと、男性が優先されたからだと考えがちです。
確かに、当時の社会には男性中心の価値観がありました。しかし、それだけでは説明しきれません。年齢や家長としての立場も関係していたからです。
父の言葉を思い出すと、男性中心の習慣として見てしまいます。でも、年長者を敬う意味もあったと知ると、見え方が少し変わります。
例えば、父親には一人用のお膳が出されます。一方で、子どもたちは同じお膳を囲んでいます。そんな場面にも、家族の立場が表れているのでしょう。
男女の生活空間を分ける考え方もありました。そのため、食事を別々の場所で取る場合もありました。
ただし、習慣は時代や地域、家庭によってさまざまです。どの家でも同じだったわけではありません。
昔の家族はいつも別々に食べていた?
そうではありません。独床だけでなく兼床もあり、家族が同じお膳を囲んで食べることもありました。
例えば、幼い子どもが祖父と同じお膳を囲むこともありました。独床は家庭内だけでなく、客をもてなす場でも使われました。
現在の韓国では、家族が一つの食卓を囲むのが一般的です。住まいや暮らし方とともに、食事の風景も変わってきました。
何気ない食事の風景から、その時代の家族関係が見えてくるのは面白いところです。
ただし、時代劇には演出もあります。裕福な家の食事風景が、当時のどの家庭にも当てはまるとは限りません。
まとめ
時代劇で父親や祖父だけ別のお膳を使うのはなぜでしょうか。そこには「独床(外床)」という食事形式があります。年長者や家長を重んじる考え方も関係していました。
独床は、必ずしも別室で一人きりで食べることではありません。また、昔の家族がいつも別々に食べていたわけでもありません。
次に韓国時代劇を見るときは、お膳にも注目してみてください。誰が一人用のお膳を使い、誰と誰が同じ席にいるでしょうか。せりふ以外のところからも、登場人物の関係が見えてくるかもしれません。
参考資料
