子どもの頃、夏になると家族みんなが自然と集まる場所がありました。それが「평상(ピョンサン)」です。

ピョンサンは、人が座ったり食事をしたり、横になって休んだりするための韓国の木製の台です。昔は家庭の庭などでよく使われ、現在も公園や登山道などの屋外で見かけることがあります。

母方の祖母の家にもありましたし、私の家にもありました。暑い日の夕方になると、そこで家族みんなで夕食を囲みます。食べ終わってもすぐ家の中に戻るわけではなく、そのまま話し込んだり、スイカなどの果物をつまみながら涼んだり。気がつけば、かなり長い時間を過ごしていることもありました。

夜になっても暑さが引かない日は、ピョンサンの上にゴザや布団を敷き、そのまま外で眠ることもありました。今思えばずいぶん昔らしい夏の過ごし方ですが、当時の私にとってはごく普通のことでした。夏になれば、そこへ行けば誰かがいる。ピョンサンは、そんな場所だったように思います。

大人になった今振り返ると、ピョンサンはただの木の台ではなく、外にあるもう一つの居間のような存在だったのかもしれません。

もちろん、それほど広い場所ではありません。家族みんなで座れば少し窮屈なくらいです。でも、その狭さのおかげで自然と肩が近くなり、同じ場所でご飯を食べ、くだらない話をし、ときにはそのまま横になる。今より家族同士の距離が近く感じられたのは、そんな時間が日常の中にあったからなのかもしれません。

韓国ドラマでピョンサンが映ると、私は今でも子どもの頃の夏を思い出します。

韓国ドラマに出てくる木の台「ピョンサン」とは?

韓国ドラマを見ていると、家の庭や路地、田舎のおばあちゃんの家などに、大きな木の台が置かれていることがあります。その上で家族が食事をしたり、お年寄りが近所の人と話したり、誰かが昼寝をしていたりします。この木の台が「평상(ピョンサン)」です。

韓国学中央研究院の「韓国民族文化大百科事典」では、ピョンサンは木や竹などで作られ、人が座ったり横になったりするために使われてきた台として紹介されています。なかでも庭に出して使うものは、暑い季節に涼みながら過ごす場所でもありました。

端に腰掛けるだけでなく、靴を脱いで上がり、あぐらをかいたり、食事を並べたり、そのまま横になったりします。テーブルやベンチのようにも使われ、ときには寝床にもなりました。単なる休憩用の台というより、暮らしの中でいろいろな役割を担っていた場所です。

なぜ韓国ドラマによく登場するの?

ピョンサンは、何か一つの用途だけに使う場所ではありません。食事が終わってもそのまま座って話せますし、子どもが遊ぶ横で大人が世間話をすることもあります。疲れれば横になり、誰かが来れば少し詰めて座る。家の中でも外でもない、そんな曖昧さのある空間でした。

だからこそ、家族や近所の人たちの日常を描く韓国ドラマにもよくなじみます。おばあちゃんと孫が並んで話したり、家族が食事を囲んだり、近所の人たちが集まって世間話をしたり。ピョンサンの上に人が集まるだけで、家族や近所の人たちの距離の近さまで伝わってくることがあります。

特に昔の住宅街や家族の記憶を描く作品では、人が自然と集まるこうした場所が、その時代の空気を伝える背景にもなっています。『応答せよ1988』のように家族や近所付き合いを描いた作品を見ると、韓国の昔の暮らしをイメージしやすいかもしれません。

ピョンサンは今も韓国で使われている?

今も使われています。ただ、昔と同じような形で家庭の庭に置かれているとは限りません。

背景の一つに、韓国の住宅事情の変化があります。2024年の人口住宅総調査では、韓国の住宅の65.3%がアパートでした。アパートが住宅の中心となった現在、昔のように自宅の庭へ大きなピョンサンを置く光景は、特に都市部では目に入りにくくなっています。

それでも、ピョンサンそのものが消えたわけではありません。韓国の造園設計基準にも休憩施設の一つとして「평상」が挙げられており、公園や住宅団地などの屋外空間に設ける設備として扱われています。自治体が登山道周辺のピョンサンを整備する例もあります。

家庭の庭で使われてきた一方で、現在も公園や登山道などで人々が一息つくための設備として使われています。置かれる場所や使われ方は変わっても、「人が集まって休む場所」という役割は今につながっています。

日本の「縁台」と同じもの?

見た目が似ているため、「韓国版の縁台」と説明されることもあります。初めて見る人には分かりやすい例えですが、まったく同じものと考えると少し違います。

「평상」という言葉が指す範囲は、ドラマで見る庭先の木の台だけではありません。韓国民族文化大百科事典では、室内で使うもののほか、庭に出して使うタイプを「뜰마루(ットゥルマル)」と説明しています。

複数人が靴を脱いで上がり、食事を広げたり、横になったりできるのもピョンサンらしい使い方です。日本語で一語に置き換えるより、「庭などに置く、大きな木製の休憩台」と捉えると実際のイメージをつかみやすいと思います。

ピョンサンを見ると、昔の夏を思い出す

韓国ドラマに出てくるピョンサンは、一見するとただの大きな木の台です。でも、その上に家族や近所の人たちが集まっている姿を見ると、昔の韓国の暮らし方が自然と見えてきます。

私にとっても、ピョンサンは今でも夏の記憶とつながっています。韓国ドラマで庭先に大きな木の台が映ったら、それがピョンサンです。何気ない背景の一つですが、そこに誰が集まり、どう過ごしているのかを見ると、その場面の空気まで少し違って感じられるかもしれません。