「韓国では、初対面でMBTIを聞く」。数年前、そんな話をよく見かけました。
では2026年の今も、韓国では会ったばかりの相手に「MBTI何?」と聞くのでしょうか。
結論から言うと、2026年の韓国を「まだMBTIが大ブーム中」と表現するのは少し古くなっています。ただ、MBTI文化そのものが消えたわけではありません。4文字のタイプを盛んに話題にしていた時期の勢いは落ち着いた一方で、「Tっぽい」「Iだから今日は家にいたい」といった言い回しは、今もかなり残っています。
しかも一時期は、友達同士の雑談だけでは終わりませんでした。恋愛相手を探す場でMBTIが条件になったり、企業の採用書類にMBTIを書く欄が登場したり。「そこまでMBTIを見るの?」と思うような場面にまで入り込んでいたのです。
2026年8月時点では、「今も韓国でどのくらいの人がMBTIを話題にしているのか」を示す新しい全国規模の調査は確認できませんでした。そこで、ブーム期の調査と2024年の研究、2025〜2026年の実例をつなぎながら、「あのMBTIブームは今どうなったのか」を見ていきます。
そもそも、韓国のMBTIブームはどれくらいすごかった?
韓国でMBTIが若者文化として急速に広がったのは、2019年末ごろから2020年代前半にかけてです。2024年に学術誌『記憶と展望』に掲載された研究でも、2019年末からMBTIブームが浮上し、企業や市場、SNSなどを通じて広がった社会文化的な現象として分析されています。
数字を見ると、単なるネット上の流行ではなかったことが分かります。リサーチ会社・マクロミルエムブレインの調査を紹介したRetail Talkによると、「MBTI性格タイプ検査」を受けた経験がある人は2021年の31.6%から、2023年には52.8%へ増加。2023年には回答者の約8割が「MBTIブーム」を体感していると答えています。調査対象は1,000人です。
MBTI
4つの指標を組み合わせて、16タイプで表すのがMBTIの基本
ブームの頃は、「好きな映画は?」「趣味は?」より「MBTI何?」のほうが早い、と冗談で言われるほど。もちろん誰もがそうだったわけではありませんが、性格の話をいきなり深掘りせずに済む便利な話題として定着しました。
日本で血液型の話が軽い性格トークになる感覚に少し似ています。ただ韓国の場合は、4文字の組み合わせで「私はこういう人」と表せるのがポイント。プロフィールやショート動画、アイドル企画、恋愛ネタとも相性がよかったのです。
恋愛相手にも就職先にも?MBTIが入り込みすぎた時期
MBTIブームの勢いをいちばん感じるのが、このあたりです。
「友達同士で話すくらいなら分かる。でも恋愛や就職にも?」と思うかもしれません。実際、韓国では一部のマッチングアプリや結婚相談、採用の場にまでMBTIが登場しました。
恋愛では「NFタイプの人だけお願いします」
2023年には、韓国のマッチングアプリの掲示板で「NFタイプの人だけプロフィールを送ってほしい」と希望する投稿が報じられました。
年齢、仕事、住んでいる場所、趣味。その横にMBTIまで条件として並ぶわけです。
さらに2024年のTV朝鮮の取材では、一部の結婚情報会社(結婚相談サービス)が初回相談で本人のMBTIを確認し、希望する相手のタイプまで尋ねる様子も紹介されています。
とはいえ、「韓国のお見合いではMBTIが必須」という話ではありません。確認できるのは、あくまで一部のアプリやサービスでMBTIが条件やプロフィール項目のように扱われた事例です。それでも、結婚相手を考える場にまで4文字が登場したというだけで、当時の熱気はかなり伝わってきます。
就活では「あなたのMBTIは仕事にどう役立つ?」
就職活動でも実例があります。
2022年、韓国のSh水協銀行は新卒採用の自己紹介書(日本のエントリーシートに近い応募書類)で、自分のMBTIタイプが応募職種にどう役立つかを書く設問を設けました。ほかにも、特定のMBTIタイプを優遇・除外する求人広告が話題になっています。
ここまで聞くと、「韓国では就活でMBTIを書くのが普通だったの?」と思いそうですが、そこは少し違います。
韓国雇用労働部と韓国雇用情報院が2022年に大手・中堅企業752社の採用担当者を調査したところ、採用過程でMBTIを活用していた企業は23社、全体の3.1%でした。さらに、MBTIが採用にある程度以上の影響を与えると答えた企業は17社、全体の2.3%です。
つまり、実際にはかなり少数派です。それでも、採用でMBTIを使う企業が現れ、それ自体がニュースになるほど注目された。そこに当時の韓国らしいMBTI熱が表れています。
では、2026年にはもう「オワコン」なの?
「2020年代前半と同じ勢いか」と聞かれれば、答えはおそらくノーです。
2025年には韓経BUSINESSや毎経ECONOMYが、若い世代の間でMBTIに代わる新しい性格ラベルとして「エゲン・テト」が注目されていると報じました。エゲン・テトは、エストロゲンやテストステロンというホルモン名を借りて性格傾向を表すネット上の分類です。実際のホルモン値を測る医学的な診断ではありません。
新しい診断や性格ラベルが次々に出てくることを考えると、MBTIだけが話題の中心だった時代は過ぎたと見てよさそうです。
ただし、「じゃあMBTIはもう誰も使わないのか」というと、そうでもありません。
韓国プロ野球・kt wizの公式YouTube「Wiz TV」は、2026年4月1日に「MBTI別 状況問答」をテーマにした動画を公開しています。内容の中心はTとFの反応の違い。数年前の大ブームを前提にした企画が2026年にも成立しているわけです。
流行の主役からは降りても、「意味が通じるネタ」としてはまだ現役。今のMBTIは、そんな立ち位置に近いのかもしれません。
韓国で今も強いのは「16タイプ」より1文字ネタ
韓国のMBTI文化で面白いのは、16タイプを全部覚えていなくても話が通じることです。
特に定着したのが、TとF、IとEのように1文字だけを取り出す使い方です。
「너 T야?(ノ Tヤ?)」=「君、Tなの?」
韓国のMBTIネタをひとつだけ覚えるなら、これです。
「너 T야?(ノ Tヤ?)」。
直訳すると「君、Tなの?」。2023年には流行語として韓国メディアでも取り上げられました。
たとえば友達が「今日、本当に疲れた」と言ったとします。
そこで「大丈夫?つらかったね」と共感するより先に、「何があったの?」「じゃあ、こうすればよかったんじゃない?」と原因を分析したり、解決策を出したりする。
すると相手が、「너 T야?(君、Tなの?)」。
要するに、「今ほしいのは分析じゃなくて共感なんだけど」という軽いツッコミです。

もちろん、これはネットや日常会話で作られたステレオタイプ。公式のMBTIでは、T(Thinking)とF(Feeling)は意思決定の際に何を重視しやすいかという「選好」を表します。「Tは冷たい」「Fは論理的に考えられない」という意味ではありません。
「Iだから今日は家にいる」も定番
I(Introversion)とE(Extraversion)も、韓国ではかなり分かりやすく使われます。
「私はIだから今日は家にいたい」「あの人はEっぽいよね」といった具合です。
本来のMBTIでは、I=家好き、E=人好きと単純に分けるものではありません。ただ、日常会話ではそのくらいざっくりした“キャラ説明”として使われることがあります。
JとPも同じです。「旅行前に日程表を作るのがJ、現地に着いてから考えるのがP」といった“あるある”がよく作られます。もはや心理検査というより、ちょっとした性格コントの材料に近い感覚です。
なぜブームが終わっても、MBTI語だけ残った?
理由は意外とシンプルです。4文字で話が早いから。
- プロフィールに4文字だけ書けばいい
- 初対面でも性格の話を始めやすい
- T対F、J対Pのようにネタにしやすい
- 自分と相手の違いを冗談に変えやすい
「あなたはどんな性格ですか?」と正面から聞くと、少し重い。でも「MBTI何?」なら軽く聞ける。その手軽さが、ブーム後にも残った理由のひとつでしょう。
今では「診断結果を真剣に語るもの」というより、「Tなの?」「Iっぽい」と一言で笑える共通ネタに近づいています。
とはいえ「韓国人はみんなMBTIを信じる」は違う
ここは少し注意が必要です。
MBTIが大流行したからといって、韓国人全員が人の性格を16種類で決めつけているわけではありません。年代や個人によって関心には差がありますし、単なる会話のネタとして楽しむ人もいます。
もうひとつ覚えておきたいのが、韓国のネットで「MBTI」と呼ばれているものの中には、公式のMBTIアセスメントとは別の無料性格テストや派生コンテンツも含まれていることです。
公式MBTIが扱うのは、能力や人間としての優劣ではなく、4組の心理的な「選好」です。「このタイプだから恋愛で失敗する」「このタイプだから仕事ができない」と決めつけるためのものではありません。
FAQ
韓国では2026年も初対面でMBTIを聞きますか?
聞く場面は今もありますが、「誰もが必ず聞く」とは言えません。2026年時点で、どのくらいの人が初対面でMBTIを話題にしているのかを示す全国規模の調査は確認できませんでした。一方、2026年にもMBTIを前提にした公式エンタメコンテンツが公開されており、言葉やネタとして通じる状態は続いています。
韓国で「T」は冷たい人という意味ですか?
いいえ。「T=冷たい人」はMBTIネタから生まれた単純化です。公式の説明では、TとFは意思決定の際の選好の違いであり、感情の有無や思いやりの強さを表すものではありません。
参考にした主な資料
- KCI「MBTI 유행의 문화정치학: 청년세대의 MBTI 수용과 활용에 대한 비판적 담론분석」(2024)
- Retail Talk「주목해야 할 소비트렌드 – 셀フ分析」(マクロミルエムブレイン調査を紹介)
- イーデイリー「교제 시 10명 중 8명이 따진다는 MBTI…얼마나 맞을까?」(2023年3月30日)
- TV朝鮮「취업·연애 시장도 ‘MBTI 열풍’…새로운 스펙에 우려도」(2024年5月19日)
- SBS「MBTI 묻는 채용심사…“성격이 스펙이냐” 취준생 불만」(2022年3月1日)
- 京郷新聞「채용 때 ‘MBTI 활용’ 기업 3.1% 그쳐」(2022年7月19日)
- 韓経BUSINESS「MBTI는 한물 갔다, Z세대는 ‘이것’ 묻는다」(2025年5月19日)
- 毎経ECONOMY「“요즘은 MBTI 안 해요”…男女 ‘에겐·테토 테스트’ 뭐길래」(2025年5月23日)
- kt wiz Wiz TV「MBTI별 상황 문답」(2026年4月1日)
- Myers & Briggs Foundation「MBTI Preferences」
まとめ
韓国のMBTIは、2020年代前半のような大ブームからは一段落しています。それでも「Tなの?」「Iっぽい」といった言葉やネタは今も残っています。
恋愛相手の条件になり、採用書類にまで登場した時期があったことを考えると、韓国でMBTIがどれほど広く浸透していたかが分かります。
今の韓国を見るなら、「MBTIはまだ流行っている?」より、「大ブームが終わったあと、MBTIがどんな言葉として残った?」と見るほうが面白いかもしれません。
