日本に来たばかりの頃、玄関を見るたびに少し不思議に感じていたことがありました。

それは、脱いだ靴の向きです。

韓国で暮らしていた頃、玄関で靴を脱ぐと、つま先が家の中を向いたままになっている光景をよく見ていました。 私自身も子どもの頃からそれが当たり前だったので、靴の向きを気にしたことはほとんどありませんでした。

ところが日本に来てみると、玄関に並んでいる靴が、韓国で見慣れていたのとは反対を向いています。 つま先が玄関のドア側、つまり外へ出る方向にそろえられていたのです。

最初は「どうしてわざわざ向きを変えるんだろう?」と少し驚きました。 韓国も日本も家に入るときに靴を脱ぐので、玄関での習慣もそれほど変わらないと思っていたからです。 実際に暮らしてみると、こんな小さなところにも違いがありました。

日本では脱いだ靴を外向きにそろえる

日本では、人の家を訪ねたとき、玄関で脱いだ靴の向きを変え、つま先を玄関側に向けてそろえるのが一般的な訪問マナーとして知られています。

帰るときに、そのまま足を入れて外へ出やすくなる置き方です。 靴を脱ぐ瞬間から後ろ向きになるのではなく、いったん前を向いて脱ぎ、家に上がってから向きを直します。

日本で育った人には何気ない動作かもしれませんが、韓国で育った私には、この「脱いだあとに向きを変える」というひと手間が新鮮でした。

今では日本での生活にも慣れ、靴を脱ぐと自然に向きを変えるようになりました。 最初は不思議だったことが、いつの間にか自分の習慣にもなっています。

韓国では「内向きに置く」のではなく、脱いだままのことが多い

韓国では家に入るときに靴を脱ぎますが、「つま先を必ず内側に向ける」という共通のルールがあるわけではありません。

少なくとも私自身は、韓国で暮らしていた頃に靴の向きを作法として意識したことはありませんでした。 玄関で靴を脱いで、そのまま家の中へ上がる。 そうすれば、靴のつま先は自然と室内側を向いたままになります。 韓国にいた頃は、それをわざわざ反対向きに直すという発想自体があまりありませんでした。

もちろん、韓国でも靴をきれいにそろえる家庭はありますし、脱いだ靴をすぐ靴箱にしまう家もあります。 「韓国では必ず内向き」と決まっているわけではありません。

韓国では「内向きにそろえる」というより、脱いだ靴をそのままにしている感覚のほうが近いと思います。 そのため、結果としてつま先が室内側を向いた靴を目にすることが多くなります。

靴の向きには、ちょっとした風水の話も

靴の向きを調べていると、風水に結びつけた話も見かけます。 「つま先を家の中に向けると福が逃げない」という説があるかと思えば、反対に「外向きにして悪い気を外へ出す」という話もあります。

言っていることが正反対なので、韓国の決まった風習というより、靴の向きにまつわるちょっとした俗説として読むくらいがよさそうです。

私自身、韓国で暮らしていた頃に風水を考えて靴の向きを決めたことはありませんでした。 今振り返っても、「脱いだ向きのまま置いていただけ」という感覚がいちばん近いです。

韓国ドラマを見ると、靴の向きが分かりやすい

韓国ドラマで玄関のシーンが出てきたら、登場人物の足元を少し見てみてください。 作品によっては、靴を脱いだあと、向きを変えずにそのまま家の中へ入っていく場面もあります。

韓国で暮らしていた私には何でもない動作でしたが、日本の習慣に慣れてから見ると「あ、本当に靴が内側を向いたままだ」と気づくことがあります。

ドラマに出てくるすべての家がそうではありません。 それでも、ストーリーとは関係のない玄関での何気ない動作に、こうした生活習慣が見えるのは面白いところです。

靴を脱ぐ文化は同じでも、玄関の習慣は少し違う

韓国と日本は、家に入るときに靴を脱ぐという点ではよく似ています。 それでも、脱いだあとの靴をどう置くかまで見てみると、同じではありません。

私にとって、日本で外向きにそろえられた靴は、暮らし始めてから気づいた小さな文化の違いの一つでした。 今では自分も自然に外向きにそろえていますが、韓国で室内側を向いた靴を見ると、「そうそう、韓国ではこの向きが見慣れていたな」と感じます。

普段なら気にも留めない靴の置き方ですが、比べてみると意外に面白いものです。 韓国ドラマで玄関のシーンが出てきたら、登場人物が脱いだ靴の向きにも少し目を向けてみると、韓国の日常が身近に感じられるかもしれません。