韓国のMBTIブームは終わった?調査と会話に残る言葉を整理
「韓国では、初対面でMBTIを聞く」。数年前、そんな話をよく見かけました。
では2026年の今も、韓国では会ったばかりの相手に「MBTI何?」と聞くのでしょうか。
MBTIを題材にしたコンテンツは2026年にもあります。ただし、全国的な利用率の新しい調査を示せていないため、「ブームが終わった」「今も全員が話題にする」とは断定できません。調査で分かる範囲と、会話に残る表現を分けて見ていきます。
しかも一時期は、友達同士の雑談だけでは終わりませんでした。恋愛相手を探す場でMBTIが条件になったり、企業の採用書類にMBTIを書く欄が登場したり。「そこまでMBTIを見るの?」と思うような場面にまで入り込んでいたのです。
2026年10月時点で、韓国全体のMBTI利用や会話での頻度を、過去の調査と同じ条件で比較できる新しい全国調査は確認できませんでした。この記事では、2023年の全国調査、2024年の研究、2026年の公式コンテンツを分けて見ながら、「ブームが終わった」と言えるのかを考えます。
目次
そもそも、韓国のMBTIブームはどれくらいすごかった?
韓国でMBTIが若者文化として急速に広がったのは、2019年末ごろから2020年代前半にかけてです。2024年に学術誌『記憶と展望』に掲載された研究でも、2019年末からMBTIブームが浮上し、企業や市場、SNSなどを通じて広がった社会文化的な現象として分析されています。
市場調査会社エムブレインの2023年MBTI認識調査は、全国の19〜59歳の男女1,000人を対象に実施されました。回答者の80.2%がMBTIの広がりを実感し、相手にMBTIを尋ねた経験がある人は48.0%でした(2021年は28.6%)。この数字からは、調査時点でMBTIが日常会話に浸透していたことが分かります。一方、これは2023年の結果であり、2026年の利用率を示すものではありません。
「好きな映画は?」「趣味は?」と聞くより「MBTI何?」のほうが早い、と冗談になるほどでした。誰もが使っていたわけではありませんが、性格の話を一から説明せずに始められる手軽さが、会話の題材として広がった理由のひとつだと思います。
日本で血液型の話が軽い性格トークになる感覚に少し似ています。ただ韓国の場合は、4文字の組み合わせで「私はこういう人」と表せるのがポイント。プロフィールやショート動画、アイドル企画、恋愛ネタとも相性がよかったのです。
恋愛や就活にも?話題になった場面と実態
MBTIブームの勢いをいちばん感じるのが、このあたりです。
「友達同士で話すくらいなら分かる。でも恋愛や就職にも?」と思うかもしれません。実際、韓国では一部のマッチングアプリや結婚相談、採用の場にまでMBTIが登場しました。
恋愛では相性や性格を話すきっかけに
2023年の調査では、相手にMBTIを尋ねた経験がある人は48.0%でした。恋愛に限った数字ではありませんが、性格タイプが人間関係の会話に入り込んでいたことは読み取れます。
プロフィールや会話でMBTIを共有すると、相性や価値観の話題にしやすい一方、4文字だけで相手を理解した気になる危うさもあります。
恋愛相手を選ぶときは、タイプの一致だけを見るより、実際の考え方や希望を話し合うほうが関係づくりには役立つと思います。
ただし、調査から韓国の恋愛でMBTIが必須だとは言えません。性格タイプは会話の入口にはなっても、相手を知る代わりにはならないという見方が妥当です。
就活では「あなたのMBTIは仕事にどう役立つ?」
就職活動でもMBTIが話題になった事例はあります。ただし、個別の話題と企業全体の採用実態は分けて見る必要があります。
韓国雇用労働部と韓国雇用情報院が公表した2022年の調査は、企業752社の採用担当者を対象に MBTIの活用状況も調べています。
ここまで聞くと、「韓国では就活でMBTIを書くのが普通だったの?」と思いそうですが、そこは少し違います。
その結果、採用過程でMBTIを活用していた企業は23社、全体の3.1%でした。MBTIが採用にある程度以上の影響を与えると回答した企業は17社、全体の2.3%です。
少なくともこの調査では、採用にMBTIを使う企業は少数でした。個別事例が大きく報じられたことと、採用現場で一般化していたことは別です。話題性だけを見て「韓国の就活ではMBTIが必須」と受け取らないことが大切だと考えます。
では、2026年にはもう「オワコン」なの?
2020年代前半の調査と最近の個別事例だけでは、現在の流行の大きさを同じ尺度で比較することはできません。
2025年には、MBTIとは別の性格ラベル「エゲン・テト」も韓国メディアで話題になりました。エストロゲンやテストステロンというホルモン名を借りたネット上の分類で、実際のホルモン値を測る医学的な診断ではありません。新しいラベルが登場したことは、性格を短い言葉で語る関心が続いている一例とは言えますが、MBTIの利用が減った証拠にはなりません。
別の性格ラベルが注目されても、それだけでMBTIの利用が減ったとは証明できません。新しい流行の紹介と、MBTIの普及率の変化は別の話です。
ただし、「じゃあMBTIはもう誰も使わないのか」というと、そうでもありません。
韓国プロ野球・kt wizの公式YouTube「Wiz TV」は、2026年4月1日に「MBTI別 状況問答」をテーマにした動画を公開しています。内容の中心はTとFの反応の違い。数年前の大ブームを前提にした企画が2026年にも成立しているわけです。
この動画は、2026年にもMBTIが企画の題材になる一例です。ただし、動画があることだけで、韓国全体の流行の大きさまでは判断できません。
会話で使われる「T」「F」「I」「E」の意味
韓国のMBTI文化で面白いのは、16タイプを全部覚えていなくても話が通じることです。
特に定着したのが、TとF、IとEのように1文字だけを取り出す使い方です。
「너 T야?(ノ Tヤ?)」=「君、Tなの?」
韓国のMBTIネタをひとつだけ覚えるなら、これです。
「너 T야?(ノ Tヤ?)」。
直訳すると「君、Tなの?」。2023年には流行語として韓国メディアでも取り上げられました。
たとえば友達が「今日、本当に疲れた」と言ったとします。
そこで「大丈夫?つらかったね」と共感するより先に、「何があったの?」「じゃあ、こうすればよかったんじゃない?」と原因を分析したり、解決策を出したりする。
すると相手が、「너 T야?(君、Tなの?)」。
要するに、「今ほしいのは分析じゃなくて共感なんだけど」という軽いツッコミです。
もちろん、これはネットや日常会話で作られたステレオタイプです。MBTIの公式解説では、T(Thinking)とF(Feeling)は意思決定の際に何を重視しやすいかという「選好」を表します。「Tは冷たい」「Fは論理的に考えられない」という意味ではありません。
「Iだから今日は家にいる」も定番
I(Introversion)とE(Extraversion)も、韓国ではかなり分かりやすく使われます。
「私はIだから今日は家にいたい」「あの人はEっぽいよね」といった具合です。
本来のMBTIでは、I=家好き、E=人好きと単純に分けるものではありません。ただ、日常会話ではそのくらいざっくりした“キャラ説明”として使われることがあります。
JとPも同じです。「旅行前に日程表を作るのがJ、現地に着いてから考えるのがP」といった“あるある”がよく作られます。もはや心理検査というより、ちょっとした性格コントの材料に近い感覚です。
なぜMBTIは短い会話の材料になる?
私には、短い記号で会話を始められることが、この表現の残りやすさにつながっているように見えます。ただし、これは会話上の使いやすさについての解釈です。
- プロフィールに4文字だけ書けばいい
- 初対面でも性格の話を始めやすい
- T対F、J対Pのようにネタにしやすい
- 自分と相手の違いを冗談に変えやすい
「あなたはどんな性格ですか?」と聞く代わりに、知っている記号を使うと話を始めやすい場面があります。もちろん、性格の話をしたくない相手には無理に聞かない配慮も必要です。
ここで挙げた「Tなの?」「Iっぽい」は、会話を単純化した表現です。正式なアセスメントの説明と、冗談としての使い方を分けて受け止めましょう。
とはいえ「韓国人はみんなMBTIを信じる」は違う
ここは少し注意が必要です。
MBTIが大流行したからといって、韓国人全員が人の性格を16種類で決めつけているわけではありません。年代や個人によって関心には差がありますし、単なる会話のネタとして楽しむ人もいます。
もうひとつ覚えておきたいのが、韓国のネットで「MBTI」と呼ばれているものの中には、公式のMBTIアセスメントとは別の無料性格テストや派生コンテンツも含まれていることです。
公式MBTIが扱うのは、能力や人間としての優劣ではなく、4組の心理的な「選好」です。「このタイプだから恋愛で失敗する」「このタイプだから仕事ができない」と決めつけるためのものではありません。
FAQ
韓国では2026年も初対面でMBTIを聞きますか?
聞く場面は今もありますが、「誰もが必ず聞く」とは言えません。2026年10月時点で、どのくらいの人が初対面でMBTIを話題にするのかを示す全国調査は確認できませんでした。一方、2026年にもMBTIを題材にした公式コンテンツが公開されており、少なくとも会話や企画の題材としては残っています。
韓国で「T」は冷たい人という意味ですか?
いいえ。「T=冷たい人」はMBTIネタから生まれた単純化です。公式の説明では、TとFは意思決定の際の選好の違いであり、感情の有無や思いやりの強さを表すものではありません。
参考リンク
- MBTI 유행의 문화정치학(KCI)
- 2023年「自我アイデンティティとMBTIに関する認識調査」(TrendMonitor)
- 青年採用イシュー調査(韓国雇用労働部)
- MBTI별 상황 문답(kt wiz公式YouTube)
- MBTI Preferences(Myers & Briggs Foundation)
まとめ
最近の事例から確認できるのは、MBTIが今もコンテンツや会話の材料になることです。流行の規模を断定せず、相手が冗談として使っているのか、真剣な自己紹介なのか、文脈を見て受け止めるのがよいと思います。
恋愛相手の条件になり、採用書類にまで登場した時期があったことを考えると、韓国でMBTIがどれほど広く浸透していたかが分かります。
韓国の会話でMBTIが出てきたら、流行しているかどうかに加え、その場でどんな意味で使われているのかを見ると理解しやすくなります。
