日本で韓国の話をしていて、「韓国にはキムチ専用の冷蔵庫がある」と言うと、意外と驚かれることがあります。

「普通の冷蔵庫があるのに、キムチ用の冷蔵庫もあるんですか?」

実際、何度かこう聞かれたことがあります。

韓国ではそれほど珍しいものではなく、私の両親の家にも普通の冷蔵庫とは別にキムチ冷蔵庫があります。

ただ、私が子どもの頃からあったわけではありません。

昔はキムチも普通の冷蔵庫に入れていた

私が子どもの頃は、キムチもほかのおかずと一緒に普通の冷蔵庫に入れていました。

冷蔵庫を開けると、おかずの容器の間に大きなキムチの容器が入っていて、それが当たり前でした。キムチだけ別に保存するという発想もありませんでした。

それが、いつの頃からか周りでもキムチ冷蔵庫を使う家庭が少しずつ増え、私の両親も購入しました。

初めて使ったときは、かなり新鮮だったのを覚えています。

普通の冷蔵庫に入れていた頃よりもキムチの状態が長く保たれましたし、キムチを別に保存できるので、ほかの食品ににおいが移ることもあまり気にしなくて済みました。

当時の私には、ちょっとした衝撃でした。

キムチを保存するためだけに冷蔵庫があること自体が面白かったのですが、実際に使ってみると「なるほど、これは便利だな」と思った記憶があります(笑)。

今では両親の家に行っても、普通の冷蔵庫の隣にキムチ冷蔵庫がある光景はすっかり見慣れました。

韓国の上開きタイプのキムチ冷蔵庫。内部にキムチが保存されている
写真:国立国語院 / Wikimedia CommonsCC BY-SA 2.0 KR

キムチ冷蔵庫はいつ頃から広まった?

韓国でキムチ冷蔵庫が本格的に知られるようになったのは、1990年代半ばからです。

1995年に「ディムチェ(딤채)」が発売され、その後キムチ冷蔵庫が一気に広まり、ほかの家電メーカーからも次々と商品が出るようになりました。

私の記憶でも、1990年代後半くらいから周りでキムチ冷蔵庫の話をよく聞くようになった気がします。

最初は少し特別な家電という印象でしたが、気がつけば使っている家庭も増え、今では韓国で「キムチ冷蔵庫」と聞いても特に珍しく感じません。

普通の冷蔵庫とは何が違う?

私も最初は、単純に「キムチを入れるための冷蔵庫」くらいに思っていました。

でも、キムチは冷蔵庫に入れれば状態がそのまま止まる食品ではありません。保存している間も発酵は続き、時間がたつにつれて少しずつ味が変わっていきます。

そのためキムチ冷蔵庫は、キムチが早く熟成しすぎないようにしながら、温度の変化をできるだけ抑えて保存できるように作られています。

商品によっては、白菜キムチや水キムチなど種類に合わせて保存方法を選べたり、熟成具合を調整できたりするものもあります。

昔の韓国では、冬に作ったキムチをかめに入れ、土の中に埋めて保存することもありました。土の中は外の気温の影響を受けにくく、温度が比較的安定していたからです。

ただ、マンション暮らしが増えた今では、昔のように庭にかめを埋めるのはなかなかできません。

キムチ冷蔵庫は、そうした昔の保存方法を家庭用の家電で再現しようとしたものだと考えると、少し分かりやすいと思います。

なぜキムチ専用の冷蔵庫までできたのか

韓国では、キムチを本当によく食べます。

私の家でも、食卓にキムチがない日のほうが珍しいくらいでした。あまりにも身近だったので、韓国に住んでいた頃はキムチを特別な食べ物だと意識したこともありません。

特にキムジャンの時期になると、一度にたくさんのキムチを作ります。すべてを普通の冷蔵庫に入れようとすると、それだけでかなり場所を取りますし、ほかの食品と一緒に保存するのも大変です。

そう考えると、キムチを別にして、より長く保存できる冷蔵庫が生まれたのも不思議ではありません。

肉をたくさん保存する人に肉専用の冷蔵庫があれば便利なのと同じように、韓国ではそれだけキムチをよく食べ、たくさん保存してきたからこそ、キムチ専用の冷蔵庫まで生まれたのだと思います。

韓国では普通でも、日本では少し珍しい家電

韓国に住んでいた頃は、キムチ冷蔵庫を見て特別だと思ったことはほとんどありませんでした。

家にもありましたし、周りでも普通に見かけていたからです。

ところが日本で「両親の家には普通の冷蔵庫とキムチ冷蔵庫がそれぞれある」と話すと、「キムチ専用の冷蔵庫が本当にあるんですか?」と驚かれることがあります。

そんな反応を見るたびに、私もあらためて気づかされます。

韓国にいた頃はあまりにも身近で気づきませんでしたが、キムチだけを保存する冷蔵庫が作られ、それが多くの家庭で使われているというのは、確かに韓国らしい光景なのかもしれません。

今でも両親の家にあるキムチ冷蔵庫を見て、特別なものだとは感じません。

それでも日本の人に説明していると、キムチが韓国の暮らしの中にどれだけ深く根付いているのかを、あらためて感じることがあります。