日本で暮らしていると、何度となく聞かれた質問があります。
「韓国の人って、お酒に強いですよね?」
この質問、答えるたびに少し困ります。というのも、私は実際にかなり飲めるほうだからです。
「韓国人がみんな強いわけじゃないですよ」と説明したあとで一緒に飲むと、案の定「ほら、やっぱり韓国人!」と言われます。そう言われると、もう何も言えません(笑)。
ただ、私がお酒に強いことと、韓国人がお酒に強いことはまったく別の話です。韓国にもほとんど飲めない人はいますし、少し飲んだだけで顔が真っ赤になる人もいます。
では、なぜ日本では「韓国人=お酒に強い」というイメージがこれほど根強いのでしょうか。長く日本で暮らして、同じことを何度も聞かれるうちに、私自身も気になるようになりました。
韓国人は本当にお酒に強いのか
当たり前ですが、これは人によります。韓国人だから生まれつき소주(ソジュ)に強い、というわけではありません。まったく飲めない人もいれば、そもそもお酒が好きではない人もいます。
それでも日本で「韓国人はよく飲む」と思われているのは、昔の飲み会文化のイメージが強く残っているからではないかと思います。特に以前は、気づけばかなりの量を飲んでいた、ということも多かったです。
日本では自分のペース、韓国では何度も「짠(チャン)」
日本でお酒を飲むようになって、最初に感じた違いのひとつが飲むペースでした。
もちろん相手や集まりによりますが、私が経験した日本の飲み会では、最初にみんなで「乾杯」したあとは、それぞれ自分のペースで飲むことが多かったです。生ビールを一杯置いて、話をしながらゆっくり飲む人もいます。
一方、私の記憶にある昔の韓国の飲み会は少し違いました。
「짠(チャン)!」
とグラスを合わせたら、その一杯を飲み切る。空いたグラスには誰かがお酒を注ぎ、しばらくするとまた「チャン!」。そして、また飲む。そんな流れになることがよくありました。
ソジュのグラスは小さいので、最初は大した量に感じません。でも、空けては注ぎ、また乾杯することを繰り返していると、飲む量はあっという間に増えます。

日本の人が韓国人を見て「お酒に強い」と感じたのも、酒豪をたくさん見たからというより、こうした飲むスピードや飲み方の違いが大きかったのかもしれません。
昔の韓国は、とにかく飲む機会が多かった
飲み方だけでなく、そもそもお酒を飲む機会が今より多かったと思います。
友人と会えば一杯、大学の集まりでも一杯。会社に入れば会食や飲み会がありました。昔の会社の飲み会は、夕食だけで終わらず、二次会で別の店へ移り、そのまま三次会まで続くことも珍しくありませんでした。
韓国語の「언제 술 한잔하자(オンジェ スル ハンジャン ハジャ/今度、一杯やろう)」も、お酒そのものが目的というより、「今度会って話そうよ」に近い感覚で使うことがあります。
仲良くなりたい人と一杯。久しぶりに会った友達と一杯。うれしいことがあっても一杯、つらいことがあっても一杯。考えてみると、飲む理由はいくらでもありました。
お酒が特別好きではなくても、付き合いで飲み会に参加することは今より多かったと思います。
韓国でお店の外まで飲みの空気が広がる光景については、韓国ドラマでよく見る「コンビニ前で一杯」は今もある?でも紹介しています。
韓国の飲み文化を語るなら、やはり소주(ソジュ)は外せない
韓国の食堂で、삼겹살(サムギョプサル)や찌개(チゲ)を囲んだテーブルにソジュの瓶が置かれている。韓国では、昔からよくある光景でした。
大きなグラスでゆっくり飲むというより、小さなソジュグラスに注いで飲み、空いたらまた注ぐ。一杯飲んで話をして、また「チャン」。遅れて来た人がいれば「来たね」と、また「チャン」。
そうしているうちに、気づけばテーブルの空き瓶が増えています。
韓国ドラマや映画でも、こうした飲酒シーンはおなじみです。仕事帰りに포장마차(ポジャンマチャ)でソジュを飲む会社員、友人に悩みを打ち明けながら一杯やる場面、失恋してひとりで飲む場面。韓国に住んだことがない人でも、こういう場面を何度も見ていれば「韓国ではよくお酒を飲む」という印象を持つのも無理はないと思います。
お酒を勧める空気も、昔のほうが強かった
私が覚えている昔の韓国の飲み会では、今よりも相手にお酒を勧める空気が強かったです。
相手のグラスが空けば注ぎ、誰かが乾杯を提案すれば一緒に飲む。特に会社の飲み会では、お酒が苦手でも場の雰囲気に合わせて何杯か飲む人もいました。
今の感覚で考えると、かなり負担の大きい文化です。ただ、今の韓国も昔と同じだと思うと、それは少し違います。私が見てきた範囲では、昔のように無理に飲ませる場面は減ってきましたし、会社や世代、集まりによって飲み方もかなり違います。
昔はそういう飲み会が珍しくありませんでしたが、今はだいぶ雰囲気が変わっています。
「韓国人はお酒に強い」というイメージは、体質より文化から?
私自身は、「韓国人はお酒に強い」というイメージは、体質というより、昔の飲み方や飲み会文化から生まれたものだと思っています。
生まれつきお酒に強い人が特別多いというより、飲む機会が多く、一度飲み始めると杯を重ねやすい文化があった。それを見た日本の人が「韓国の人ってよく飲むな」と思ったのも、なんとなく分かります。
もちろん、ここで書いているのは私が知っている昔の韓国の話です。時代も変わり、飲み方も人それぞれ。韓国人だからといって、ソジュが好きとも、お酒に強いとも限りません。
それでも「韓国の人って、お酒に強いですよね?」と聞かれたら
今でも、ときどき日本の人から聞かれます。
「韓国の人って、やっぱりお酒に強いですよね?」
答えはシンプルです。人によります。
韓国人がみんなソジュ好きなわけでも、みんなお酒に強いわけでもありません。ただ、昔の韓国には速いペースで杯を重ねやすい飲み会の雰囲気があり、一度始まると飲む量が多くなりがちでした。私の中では、これが昔の韓国の飲み会の印象として強く残っています。
そして問題は、私自身がお酒に強いことです。
ここまで一生懸命説明しても、一緒に飲んだ最後には結局こう言われます。
「ほら。やっぱり韓国の人って、お酒に強いじゃないですか」
……そう言われると、また最初に戻ってしまいます(笑)。
